イベント事務局効率化のカギは「ナレッジを作ること」
質問です。あなたの事務局では、担当者が一人でスムーズに問い合わせに答えられている状態でしょうか?もしできていない、時間がかかっていると感じるなら、この先に改善のヒントがあります。
イベントやフォーラムの運営では、事務局に必ず問い合わせが寄せられ、その内容は想定以上に多岐にわたります。シンプルな業務に見えて、実際の対応では「すぐに答えられない」ことも少なくありません。
その大半を占める理由は、答えを導く材料が散らばっているからです。
本記事のテーマは「効率化=ナレッジ作成」。つまり、知識を蓄積・共有することです。
ここから、なぜ担当者が一人で回答できないのか、そしてどのようにナレッジを作っていくべきかを、事例を交えて紹介していきます。
担当者が一人で回答できない理由
では、なぜ担当者は一人で回答できないのでしょうか?
理由はシンプルで、「参照できるものがないから」です。
問い合わせの回答をするには、必ず裏付けが必要です。たとえば、参加費の振込期限について聞かれたとき、「〇月〇日までです」と答えるには公式に決まった案内文や規定を確認しなければなりません。ところが、それが一か所に整理されていないと、毎回メールをさかのぼったり、上司に確認をとったりする必要が出てきます。回答方法が前と変わった、と記憶がある内容ならばなおさらです。
これが積み重なると、担当者は自分の判断で動けず、常に「確認待ち」「探し物待ち」になってしまいます。結果として、問い合わせ者への返答が遅れ、チーム全体の負担も増えてしまうのです。
事務局あるある:情報探しに時間がかかる
私が経験した事例をひとつ紹介します。
ある国際会議の事務局を担当していたとき、参加者から「当日の受付開始時間を教えてほしい」という問い合わせが来ました。単純な質問のようですが、実は答えを出すまでに30分以上かかってしまったのです。
なぜなら、最新の情報がどれなのか、すぐには判別できなかったからです。私はまず自分のメールを検索し、その後チームの共有フォルダを探し、最終的には上司に確認してようやく確定できました。
特に今はコミュニケーションツールも多様。メールが最新かと思いきや、実はTeamsのチャットで変更がまわっていた、ということも少なくありません。結果として、「誰かに聞いた方が早い」と判断されがちで、知識が個人依存のまま固定化されてしまいます。
このような「情報探しにかかる時間」は、事務局業務において驚くほど大きな割合を占めています。1件でもこの負担ですから、問い合わせが立て込むと対応に追われ、本来の業務が止まってしまいます。本人にとっては「探すのも仕事のうち」と思ってしまいがちですが、実際にはもっと効率化できる部分なのです。
解決策:ナレッジを作ろう
では、どうすればいいのでしょうか?
この問題を解消する一番の方法、それは:
ナレッジ(知識の蓄積・共有)を作ること。
ナレッジとは、問い合わせ対応の中で得た情報や判断基準を整理し、誰でも参照できる形にまとめたものです。FAQ集、Q&Aデータベース、マニュアルの形でも構いません。大切なのは、「一度確認したことは次から迷わず使えるように残す」という姿勢。
問い合わせに答える前に確認する「拠り所」があれば、担当者は一人で対応できる。つまり「誰でも答えられる」状態に変えられるのです。
逆にここで判断がつかないものはイレギュラー質問として整理でき、上司に確認すべきかどうかを見極めやすくなります。
といっても、最初から完璧なマニュアルを作る必要はありません。大切なのは「よくある問い合わせ」「決まっているルール」「回答に迷ったことやイレギュラー対応」を少しずつ記録し、整理していくことです。
ナレッジ作成のポイント
1. 問い合わせベースで残す
どんなに細かいことでも、問い合わせが来たらその回答と根拠をメモします。
「参加登録のキャンセルはできますか?」→「キャンセルポリシーの通り〇日前まで可」など。「誰から、どんな質問が来て、どう答えたか」を残すだけでも、後からの確認は格段に楽になります。少し手間はかかりますが、同じ質問が来た場合にも都度残しておくと役立ちます。後から「どんなお問い合わせが多かったか」を振り返るのに便利だからです。また、そういった質問を公式ウェブサイトのFAQに反映できれば、問い合わせそのものを減らすことにもつながります。
2. 最新情報を一元化する
チーム内のフォルダやチャットに散らばらないよう、必ず「ここを見ればわかる」という場所を決めます。GoogleドキュメントやExcelでも十分です。
3. 過去の自分を助けるつもりで書く
「あのときの情報どこだったっけ?」と悩んだ経験をベースに、未来の自分や同僚が迷わないよう記録を残します。
4. 更新をチームで意識する
ナレッジは作った瞬間から古くなっていきます。情報を更新する習慣をチームで共有しましょう。
■ナレッジがあると何が変わるか?
• 担当者一人で回答できる → 上司や他のスタッフの手を煩わせない
• 返答スピードが上がる → 利用者の満足度が上がる
• 情報のぶれがなくなる → 誰が答えても内容が統一される
• 新人教育の時間が減る → ナレッジを見せるだけで業務を引き継げる
つまり、ナレッジを作ることは「効率化」だけでなく対応の品質向上や属人化の解消にも直結します。
まとめ
事務局運営で担当者が一人で問い合わせに答えられないのは、「参照できるナレッジがないから」です。
私自身も、情報を探し回る時間や上司への確認待ちを何度も経験しました。
しかし、その経験をきっかけに少しずつナレッジを残していくと、驚くほど業務がスムーズになり、チーム全体の負担も軽くなりました。
事務局運営は、目の前の業務に追われることが多く、「効率化」という発想が後回しになりがちです。ですが、ナレッジを作ることは将来の自分とチームを助ける投資です。
イベントは一期一会ですが、事務局運営は積み重ねです。問い合わせ対応で得られた知見を、その都度“資産”として残していくことが、未来の効率化につながります。今日のひと手間が、明日のスムーズな運営を支えます。
まずは「今日受けた問い合わせを一つだけ記録する」ことから始めてみませんか?その取り組みが、チーム全体の効率化へとつながっていきます。